広告
雑談

三軒両隣 貧乏長屋の秘め事どろぼう

木造平屋建て3軒両隣全く同じ造り長屋造りの借家がドブ臭い川沿いに建っていた。

手前から大工仕事にあぶれて毎日ぶらぶらしている野良の市松、その向こう真ん中は
魚屋の源三の家、一番奥が宿屋の下足番平助の家と並んでいた。

仕事師の源は朝が早い、だから夜も早いと来ている、市松の家内は何かにつけて源を
引き合いに出す、

「お前さん、源さん見てごらんよ、仕事師はいいね、それに引き換えお前さんは毎日
ぶらぶらして ? もう米ビツに米がないよ、どうする気だい?」お常の愚痴はキツイ!

「ちぇっ! せめて家にいる時ぐらいのんびりさせろ、嫌になるぜ !」市松の愚痴は
気弱で切ない、この頃は夫婦喧嘩の絶えない市松の家である、ストレスが溜まる筈だ。

下足番の平助は仕事柄おとなしくて控えめな男、女房のお初は些か気が強いが何せ
気立てのいい女と来ている、だから毎日が平穏、波風は立たない。

さて、話題の的、源の嫁はどんな女だい ?
気風のいい男には! 正反対の無口な女、それで商売できるかね ? 名をお花という。

「お花 ? いやに隙間風が入るじゃねぇか ! どこか傷んでねぇか ?」
源は針仕事を始めたお花に声を掛けた、「そうかい、お前さんそれじゃ見てみるよ ?」

お花は「良いしょう!」と立ち上がると台所のチャブ台の後ろに回った、襖を開けると
そこは二人の三畳の寝間になっている、

隣の市松との間の薄っぺらな仕切りの下三寸ほどの高さに一文銭程の穴があるのを見つけた、
「何だいこれ!」お花がすっとんきょうな声をあげた、「野郎!」 源が珍しく声を荒げた !

何日かして・・・底冷えのする寒い朝だった、
「お前さん、寒い寒いと思っていたらここに変な穴が開いているよ?」寝床から出ない市松に
お常が叫んだ! 「何ッ!」 床を抜け出てお常の後ろに回った市が吠えた 「しまった !」

「趣旨返し」源の無言の仕返し「おいらの秘め事を返せ、覗きやがって、くそ!」
両隣で同じ言葉が飛び交った、 男ってバカだね ! 女房二人して高いびき、ほんにもう!?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

広告