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日常生活

我が従弟は船長さん

頬をそよぐ風は冷気を含んで心地よい、
「CCちゃん散歩に行くかい」
新しく買ってもらった首輪をつけて土手に向かった。

少し陽射しがきつくなったようで背中が汗ばんできた、
目の前に広がる河川敷は先般の大雨の影響で川底に
敷き詰められていたテトラポットが露見していた。

改修工事の時にはそのテトラの上に分厚い土が被せられて
いたのだが増水の関係で土が全て流されてしまったのである。

広い川幅の一部、20mほどの清らかな水面に漣が立って
周囲の風景に溶け込んでいる、

昨日は白さぎの一群が群れを成して水面を遊弋していたが
今日は、一羽としていなかった。

小石を敷き詰めた河原に腰を下ろして巨大な橋を橋桁から
見上げた、何時も何気なく通っている橋である、

その雄大さに建設に携わった工事関係者の苦労を偲ぶ、
人間は便利さを求めるゆえに自然を捨てて行く、
不思議な感慨に浸っていた。

夜中に聞こえる野良犬の声も聞こえない、
平和裏の内に日々が過ぎ行く幸せであって欲しい。
か弱きもの達の見つめる表情を振り返っていた。

「CCちゃん、用を足したかい、帰るよ!」
小柄な身体のCCが尻尾を振って見上げた。

今日は、昼から税理士先生と高速道で南へ向かう、
若き事業家を紹介するのである、
どんなドラマが待っているやら楽しみである。

ああ!そうだ、早朝に珍しい人から電話が掛かってきた、
私が愛してやまない従弟からだった。

彼は、ある商船会社で外国航路の船長をしていたが
現在は、陸に下りて重要な任務についている、

数十年ぶりの会話となったが、不思議なものである
瞬時に昔の子供時代に返っていた、お互いの幼名で呼び
合っていた。

母親同士が仲良し姉妹、
ともに黄泉の住人になっているが其の子供達は健在である。

気が付くと、南への遠出の時間が迫っている・・・
ひとまず、失礼をばいたします。

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