それは同級会の最中にもたらされた、久しぶりの
再会に座は盛り上がっていた、
私は、一人一人の席を回ってお酌していた時の事。
昨年3月に不治の病でなくなった友を一緒に見送った
Kの席に回った時その事実が彼の口から発せられた。
「Y 君亡くなったよ !」
突然の悲報だったので私は一瞬言葉に詰まった !
このブログでも紹介した事のある一級先輩の Y !
ガンを患っていたことは入院先の中央病院へ見舞った
ので承知しているが、何 ! まさか亡くなったとは。
裸ひとつから有数の果樹農家を立ち上げた努力の人
だった。
県の農業界で、いや日本の果樹指導者に数えられる程
名を成さしめた男だった、高校生の研修を受け入れ、
県の研修会の講師を務める程の先見の明の人だった。
奇しくもその同級会には、先輩が繰り広げたサウナ事件
の当事者Yaも出席していた。
サウナ事件とは、こういうものだった・・・
真冬の田舎町、先輩に連れられたYaは初めてサウナに
やって来た。
先輩についてサウナ風呂に入ろうとすると、
「 ちょっと待てサウナはまず水風呂に入ってからだょ?」
言われるままにYaは冷たい水風呂に入ったが、当の先輩は
サウナに入って行った。
じっと水の中に身を沈める彼の身体は震えが出て来た、
「Yちゃん、まだ ?」 先輩に声をかけたが、
「まだ だよ !」 先輩の声はツレナかった ?
サウナとは、何と寒いものか、しかし、正直な彼は先輩の
言葉を信じて水風呂に浸かったままだった、
震えが止まらなくなって、ようやく先輩の許可が降りた、
その時にはもうYaの身体は限界に来ていた、
数日、風邪の為、寝床から出ることができなかった。
後日、先輩から聞いていた私は、Yaに聞いて見た ?
「Yちゃんがいけんのよ! おかげで風邪を引いて困った
わい!」
夏ミカンを貫手で貫く豪の者、Yaの初サウナは、風邪と
とんだ友情で消えない想い出を産んだ ?
そのY先輩の死亡の報である、
「S君!入院していたが今日退院することになった、時間
が有るので会えないか ?」
豪放磊落、講道館柔道三段男一途は、こうして私の前から
永遠に去って行った、
自分が手塩にかけたみかんの樹に花びらが咲き始めた季節
財産を妻と娘夫婦に残して、
身 ひとつで 黄泉の国に向かった、先輩 Y !
「S 君 !」他には厳しい男だったが私に怒った顔を見せた
ことはなかった。
絵も言えぬ笑顔を見せた男は、大好きだった母上の元に向った。