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雑談

木枯らしは夏の日の光芒を覗かせて  風笛を鳴らした

無責任  無関心  その先に来るもの

私はAの目を見ながら右横に身体を寄せた、
Aは完全に血の気が引いてその眼は精神異常者のそれになっていた。

振り回している刃物を持った相手の手首を私の両手で制御した、
Aは喚きながら私の手を解こうと振り回すが私の握力が上回って動きが
止った。

「止めよ ! 包丁を取ろうと思えば世話なく取れるが無茶はしたくない、
包丁を離してくれ !」本当は口汚い方言でしゃべっているのである ?

「やかましい! お前も殺すぞ !」 Aの喚き声が耳元にガ~ンと響く、
からだを密着させて2人はこんな会話を交わしていたのである。

尋常ではない意識の男は予想外の力を発揮する、途中力が抜けたので
一瞬手を離したが、後ろで止めに入っているCが悲鳴を上げた、
「Sさん、離したらダメ ! 止めてよ !」

取ろうと思えば世話ないが、仲間同士の喧嘩である、そこまで強権に
事を運んでも仕方ないと思いなおして、辛抱して説得することにした。

後はAの精神状態と呼吸・間合いを見て一瞬の隙で取り上げた。

震えて声もない女性二人に「何処かへ始末して!」と蹴って預けたが ?
何と私の店へ持って行ったので、結局又Aの手元に戻ることになった。

女性2人の内の1人の夫はその町で名の売れた男伊達、慣れた筈の場面
だと思うが動転すると平常心を失うものである、所詮おんな、無理もない。

顛末 !
その後、九州行きのフェリ-乗り場に出たB達は、Aによって岸壁から
海へ突き落とされて、必死に這い上ろうとするBは再び蹴飛ばされて海に
転落、翌日頭に鉢巻姿の醜態を見せることになる。

Aは、あくる日、私の店に丁重に頭を下げて来た、日頃の面識も有って
気持ちの良い侘びを入れてくれた、全く因縁は残らなかった。

「Aさん良かったね、やっていればあんたは刑務所、相手は病院、最悪
殺人、無事に済んで良かったよ !」 

Aの顔はホッとしながら、苦笑いを浮かべて店を後にした、
それが彼を見た最後だった、二度と会う機会は来なかった、彼は私に
遠慮して遠ざかったのである。

余談、本当は彼の関係者に怖い人たちが居ない訳ではなかったのである。

相方のBは、
全国の工事現場を回る土方仕事、酒が入らないと大人しいが一旦入ると
止められない荒くれ者に変身する、昨夜は運が悪かったということになる。

あの日の出来事は忘却の彼方・・・
その後、関係者の人生はどんな軌跡を刻んだであろうか、良運を掴んで
幸せな人生を送ったであろうか ? 気になる人たちである。

様々な男達が、私に得も言えぬ笑顔を残して忘却の彼方へ消えた、
逢いたい! 会って未熟だった事を侘びたい、心ならずも不義理を詫びて
ごめんよ ! と伝えたい。

先般、故郷の同級生と忘年会の席を持った、
「刃物を向けられたら怖くないか ?」 質問のリクエストがあった !

それについては・・・
「あの当時は経験と防ぐ手立てが有ったので怖くはなかったよ」と答えた。

しかし、幾多の手馴れ達が刃物で襲われて不覚を取って命を落としている、
この事実は真摯に受け止める必要がある、油断大敵そのような場に身を置か
ない事である、それが最低限の処世訓ではないか。

人生にもしも、イフ ?
あの時、私が止めに入って刃物を取り上げなかったら、精神異常の極限に
あったAは、必ずBに刃物を振り下ろした筈である、彼らの人生は暗転
したに違いない !

この個人間の喧嘩沙汰を国際問題に置き換えて見れば分かることがある、
弱い者は強いものに勝てない、道徳心を持ち得ない反日国家と日本 ?

日本の置かれた環境が如何に心もとないものか国民は眼を見開く必要が
ある。

港町の木枯らしは、夏の日の光芒を覗かせて、風笛を鳴らして消えた。

( 数十年の歳月が経過しているのに何故かあの瞬間が鮮明に蘇ってくる !?)

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