思い出

初恋の  別れ道

男には強いのに、そうとてつもなく強気なのに女には、どうしょうもなく初心な男がいた。

私の周囲にはそんな男達が多くいて勿論例外的にすぐ手をつける助平野郎もいた !

今の時代ほどではないが、女性がまだ男の三歩後に控えていた時代で、男社会全盛期である。

その彼が上京する事になり、淡い恋心の恋人との別れがそこに来ていた、

二人の秘めた情熱は抗し切れないほどの高ぶりに悶えていた、女の方から言い出せない切なさ ?

男に一歩踏み込む勇気がなかった ! 出発のリミットだけが早鐘のように迫っていた !

彼には人に言えない家庭の事情が有り、早晩仕事を求めて上京する必要に迫られていた。

彼らの恋は今で言うプラットニックラブ、先に苦い経験を積んでいた私が彼らから見れば先達だったのである、だから「Sさん!実は・・・?」 と彼から相談を受けることになった。

彼が可愛がった後輩達の卒業がそこに来て、彼の焦燥感は頂点に達していた。当時とすればスラッと背の高い純情な彼女に言い寄る男は多かったが彼の存在に黙していただけなのである。

その彼が港町を後にするとなれば、彼女を巡って男同士の闘いが持ち上がる、男とは辛いもの、そうそう簡単に弱みは見せられない、今まで拳で負けたことのない男だけに、別れの後の祭りが怖かった ?

結末は思いも依らぬ形で現れた、男の覚悟の前に女の愛情が先手を打った、さすがの私も唖然と言葉が出なかった、女の一途が開かずの扉をこじ開けたのである。

女は強い、娘もその母親も男達の度肝を向くほどの覚悟を示してくれた、これじゃあ、男は女房に一生頭が上がらないはずよ ! 私の素直な感想である。

彼ら夫婦は、故郷に律儀である、故郷をこよなく愛する都会人、父母の霊に幸せな人生を有難うと毎年帰郷して報告する。

「男とは、愛しき者よ男伊達、尻に敷かれて今日も明日も」

女の一念が結婚に漕ぎ着けた、されど出る言葉は主人を立てる言葉のみ !

「あんたは偉い、男に勲章を授けたのだから !」  彼らの帰郷の度に、私はふたりの後ろ姿に呟く、男は女房次第でどうにでもなる !?

 

初恋の 別れ道

九州行きのフェリ-が、彼らへの賛歌を奏でている !?

 

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