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人生

異動の季節  悲喜こもごも

「大役ご苦労さんです! おめでとうございます。」
数名しかいない部長に彼は就任する、

「ありがとうございます、来られたらお越しください」

私がその部署の受付にいた担当者の彼に出会ったのは古い
建物の時代だった。

落ち着きのあるしっかりした目配の職員だった、
「何か、武道かスポーツをやっているのですか ?」
出会いの時の質問だったが、彼はサッカー青年だった。

それから、堰を切ったように、仕事の合間個人的な話題を
語り合った、
私が長年住んでいた近所に伯母さんの店が在ったのである。

月日は一介の職員にいた彼に責任感と多忙な職責を与えて
人間性を磨いていく、偉くなったからお世辞を言うのでは
ないが、人間的に幅のある彼に私は期待していた。

その役所では世帯の多い部署の長となり相変わらず一兵卒
の私を奥の席から彼は優しい眼差しを投げかけてくれた。

期せずして半月前に部下の些か硬直した指導方針について
電話で問い合わせた、規則上ご理解下さいとの回答だった。
久しぶりの二人の会話だった。

彼の市民に対する温情は以前と少しも変わっていなかった ?
「Sさん、そんな事ありましたかね ?」その優しさにグッと
来るものがあった!

私が思っていたより彼は何倍も成長していた、そのほんの
ささやかな気配りが市民は嬉しいのである。

新聞辞令を拝見すると花形部署の部長に彼の氏名が○印の下
に載っていた、早速電話を入れた次第である。

「・・・ 来られたらお越しください!」
彼が大勢の部下を従えた部署から離れた奥に彼の部屋はある。

「頑張りましたね !」 故郷の伯母さんの話題を添えて訪ね
ようと思っている、古式然? 出世を拒まれた部下もいる、
私の事だからそのような縁の下の職員の話題も卓上に載せる。

春の陽射しが、悲喜こもごもの役所を照らす、浮かばれない
失意の者にこそ照って欲しいものである、
彼らにこそ、いつの日か良かったと思える日を迎えて欲しい。

次は・・・の期待を込めて !?

 

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