崩れて知る虚無感
憎いはずだった相手に、堪忍袋を切って蹴りを入れた、
その瞬間、私は虚無感に苛まれる。
あれほど憎らしく猛々しかった男が一瞬恐怖の表情で
崩れていく !
哀れみさえ感じる、弱者の怯え ?
「喧嘩に勝って 勝負に負ける。」
だったら、弱い者イジメなんかするな !
己の皮膚で痛みを知る、いづれやられることは分かっていた、
そうしないといつまでも被害者は無くならない ?
「だから、お前のやり方は正しかったんだよ !」
先輩の言葉に救われた、
青春は右と左のシーソーゲーム、善と悪の繰り返し、だょ!
金持ちで貧乏人を蔑んだおっちゃんがいた、世の中の富を
独り占め、
金への執着は、異常の領域、どんでん返しは、或る日突然?
脳梗塞に見舞われた、頭は正常なのに身体が言うことを聞かない、
人生の総仕上げは金の力でも叶わなかった !
寂しい悔しい哀しみの日々、
彼の脳裏に見えたものは、金よりも大切なものがあるという
当たり前の教え、
ようやく気がついた彼の懺悔の日々は、そう長く続かなかった。
事業家の葬儀告別式にそぐわない質素な見送り、
男の総仕上げは天から舞い落ちるわずかな雨が目を瞬かせた。
戦い済んで日が暮れて 山のお寺の鐘が鳴る。