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思い出

にわか雨  途方に暮れて

にわか雨  途方に暮れて
私の高校生活の通勤に費やする所要時間は、
1年の時で片道2時間半、往復で5時間かかっていた、

それが3年生になると、要領も覚えて往復3時間で
可能となった、
途中、大小3つの峠を越えての自転車通学である。

当時はアスファルト舗装もなく日が照ると乾燥した
土埃が舞う、だから制服及び学制帽の埃を叩くブラシ
が必需品だった。

又、
雨の日は泣く事になる、水たまりの泥道はすれ違う
車の跳ねる泥水で往生させられた  !

水と埃の洗礼に学生生活は翻弄されたのである、
卒業式当日、謹厳実直な校長先生がテーブルいっぱいの
地図を広げて激励、褒めて下さった。

「ここから通学したの、偉かったね  !」
先生に褒められる事のなかった私は、頬が紅潮したのを
覚えている。

叱る教師と褒めて育てる教師、私の中に弾ける何かが
あった、以降の人生にそれは、大切な判断材料になった。

蛍の光の季節は、未練という酸っぱい味を残して彼方へ
消えた、純愛との別れ、男としての旅立ちがそこに来ていた。

にわか雨、困惑する学生をいたぶる、通り雨、道すがら
途方にくれる青春が有った、ヒマラヤ杉が黙ってそれを
見ていた。

男同士の青春を堪能していた私に女性問題は皆無だった、
後輩たちの純愛を見て助言する立場で満足していたのだが
本当は臆病だったというのが本音である。

数少ないプラットニックラブの痛手が尾を引いていたという
のが正解である。

木枯らしの舞う晩秋、新川沿いの小さな公園で語り合う2人
に突然のにわか雨が襲った、

肌寒さを通り越して震えが来る寒さ、男は来ていたブレザーコートを彼女の肩に掛けた、歯の根がカチカチ音を出して鳴った  !

何もしてやれなかった儚い恋は、その途方に暮れた想い出を
残して2人の元から飛び立った !

にわか雨、途方に暮れて・・・
男24 年の暮れ、晩秋、ミカンの色づく季節がそこに迫っていた。

 

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