車のエンジン音に異常がある、いつもお世話になっている
近所の整備工場で見てもらった。
どうやらエンジンの寿命が来たようである、無理もない
走行距離が20万キロを越えている、
「よう乗った方ですよ!」
そういうところで私の喜怒哀楽に寄り添って来た愛車を
引退させることにした、悲しい別れだが廃車にする。
そこから私の偏屈が見えて来る、
死線を彷徨った私の人生観は変わりました !
なくしたはずの命が救われて全てが変わった。
周囲の見るもの全てが愛しくて美しく見える、
「歳とったの~ !」 久しぶりに出会うと殆どの男はそう
言う。
「歳とって恥ずかしい、おばあちゃんになってしまって!」
女性たちは違う、皆一様に自分を卑下する。
「いやいや、そんなことはありません ?
皆さん若くて綺麗ですよ !」 私のいつわざる本心です。
さて、愛車を整備工場に届けた、担当のO君にお願いして
私自身で車の中から外まで綺麗に掃除する、
乗り放題で掃除などしたことなかった、その詫びと別れに
際して感謝を込めながら言葉に出した。
「長い間、ありがとうね、あちこち傷つけてごめんよ !」
まるでペットに語るように話しかけた、未練が残る ?
私の死生観が、これ程にも変わったのである。
最後だけでも、綺麗に化粧をしてやりたいと思った。
私の性格、偏屈がどう変わったか ?
生きとし生けるもの全てが愛しい !
嘘偽りなく女性への偏見は跡形もなく消えた、
ブスとの呼称は私の脳裏と辞書には全く消え失せたのである、
その心は、表情の欠点が消えて長所だけが浮き上がってきた。
一人ひとりが美しく輝いて見える !
だから、「おばあちゃんになってしまったのよ ?」
この自嘲めいた言葉でも可愛く聞こえる、死生観はこの様に
私の精神を変えた。
元の愛車との別れの続きはどうなったか ?
走行距離は半分の10万キロだが登録初年度が1年古い同車種の
軽自動車を求めた。
資金の面は別として前車への未練と愛しさがそうさせたのである。
( 面倒かけるね! ) 車へ語りかける、
この様に独り言を言う機会が増えた、息を吸う生き物から、
物言わぬ路傍の石にまで私の語りかけは続く !
自然が愛しい、故に人間に猛威を振るう自然に私は戸惑っている、
なぜ ? 何故なんだ !
違った形の苦悩 ! 人間の悩みは尽きない !?