私の部屋は夜寝る時は雨戸を閉めて寝るので、雨なのか晴れなのか、雨戸を開けるまで分からない。
両隣とは間隔が狭く小さい家なので逆に保安上は安心できる環境のため至って気に入っている。
朝、目をあけ雨戸を開けるとガラス窓に水滴が付いている空を見上げると雨雲が垂れ下がっていた。
「ああ! 雨なんだ!」 真っ先に過ぎったのは故郷の蜜柑の採り入れ、「ああ!今日はダメになったな!」蜜柑農家の姉や甥、村人達の困惑する顔が浮かんできた。
書類の追い込みに入って多忙を極めているが、電話で現実に引き戻された。
病弱な方で時々相談の電話が掛かってくる、よろずや真骨頂というところである。
初めはまじめにお聞きしていたが途中から私の話芸が爆発する、深刻な話は笑いを重ねることで帳消しにする「S先生たらもう !」涙交じりの笑い声、腹を抱えていらっした。
初めは悲しくて泣いて、終いには可笑しくて泣き笑い !
これが杉の子学園の特長、「またお訪ねしても宜しいですか ?」鳴いたカラスが 早 笑うた ! 「いいですよ! どうぞ どうぞです !」
「奥さんに悪いですね ?」「当に呆れています ?」電話の向こうで「そうでしょう?」声のト-ンが落ちた、「S先生のおバカさん?」
肌にこたえる寒さ、懐の軽い心細さ、それがどうしたって云うのさ、私には心強い見方がいるのさ !
着物姿のお姉さんが気持ちのいい啖呵を切った ! 「べらんめえ ! これでもあたしは杉の子 命よ !」東映映画 牡丹博徒 藤 純子のお竜さんがもろ肌脱いだ。
雨は、垂れ下がる雨雲は、そんな夢を見させて男を鼓舞する、寺子屋の授業が始まろうとしていた。
雨よ降れ されど人間を泣かすなよ !?
演歌好きの昭和の男が、洋盤のメロディ-に酔っている。
星座のきらめく宇宙に想いを馳せ、
雨音を聞きながら在りし日を偲ぶ、
今は
サイモン&ガーファンクルのサウンド・オブ・サイレンス
に 心を傾けている、良い歌は万国共通、
歌よ!