おまえさん !
「お前さんったら困ったお人だよ!」 言い出したら後に引かない与三次を女房の初が呆れたように見上げた、季節は正月を当に過ぎている。
隣八方かまどの夕食の煙が漂っている、長閑な市政の生業、「てやんでい!」いつものわがままが止まらない、「それじゃあ好きにおやりよ、」さすがお初も匙を投げた。
夏の日照り、秋口からの寒波、田の稲が悲鳴をあげて稲穂をささえている、「もう出稼ぎに行かなくちゃあしょうがあんめい ?」さすが強気の与三次も愚痴が出た。
昔も今も面あてに会うのは一般の民百姓、上座に座るお役人に庶民の苦労は伝わらない(もうちょっと年貢がどうにかならぬものか?) 村人の悲鳴は変わらない。
「金比羅さんに猪が出たよ!なけなしの芋麦が食い荒らされる、やだね!」それからしばらくして草鞋姿の与三次が人目を憚るようにお初に見送られて家を出た、3里の山越で峠を急いだ。
風呂屋の罐焚き仕事の口があって住み込み奉公に就いたのである、いい歳をしてと笑う奴もいたが、夫婦は黙って耐えた、借金払いのためならグッと我慢も仕方ねえ !
苦節、何年、2人の村にあっと驚く話が届いた・・・
日本は今、政治の怠慢の前に未曾有の災難が降りかかっている、国民こぞって落ち込む様は地震と津波に飲み込まれる地獄そのものである。
果たして日本の再生はあるのか、希望を込めて与三次とお初に託して見たい、
2人のその後、ある出来事が勃発した、世間をはじめ2人が後にしたふるさとを巻き込んで事態は推移した。
令和の現在、私が与三次とお初を懐かしむその原点「風呂屋」 銭湯の物語り、
ふるさと港町の幹線道路脇に老舗の銭湯がある、まじめひと筋前任者の跡を継いで暖簾を守る、私が密かに期待して見守る若夫婦。
何事も投げてはダメだよ! 私の教訓になった与三次とお初の物語り、今だから触れたいその見本、悲しみに伏せる人々に一輪の花でもいい手向けたい、
杉の子も泣きたい時もあり、力の失せる時もある、何故に負けずに頑張るのか?
未来の子供達に立ち上がる勇気を持ってもらいたい、こんな私でも辛い時があるのです、嘆き悲しんでどうする、
立ち上がるのは己の力、ご先祖さまを悲しませてどうする、笑顔を見せよ! 声を出せ !
与三次・お初の物語り、いづれまた・・・
おまえさん !?